大阪府の南東端に位置する河内長野の駅前は、バスロータリーを囲むかたちで大手スーパーをはじめショッピングセンターが立ち並ぶ。そこには商店街もあるが、昼間なのにシャッターの閉まっている店が年々増えているようだ。 日本のどこの地域でも抱えている商店街の衰退化がここにも見受けられる。
駅前の商店の背後には低層で瓦屋根の町並みがひろがり、歴史のある民家があちらこちらに点在している。駅から何分も歩いていないのに随分違った雰囲気になる。
高野街道を少し歩くと、道を挟んで両側にお目当ての西條蔵(酒蔵)が現れる。西條蔵の建物は、道に面して両側に建っており、タイムスリップしたような雰囲気を作り出している。国の登録文化財の建物は歴史的にとても貴重な建て方であるが、残念な事に現在は使われていない。向いにある江戸末期に建てられた蔵は太い柱と梁がつくる大空間になっていて、その中で昔ながらの手作りで酒造りが行われている。古くは、かの有名な太閤秀吉が愛飲した天野山金剛寺の銘酒「天野酒」の麹の遺伝子を唯一受け継いで今日に至っている。
西條蔵の一件が登録文化財に指定され後、道行く人が足を止めて以前より関心を示すようになったそうだ。
「足を止めて人に見られれば見られるほど不思議と持ち主も愛着が湧いてくる。酒蔵周辺にも登録文化財級の建物が数多く残っているので、もっと増えたらいいのに。」と、蔵主の西條さん。
西條さんが旧蔵を登録文化財にしたきっかけは見知らぬ人が店頭でこの建物は貴重なものだから建て替えることをせずに残すべきだと主張したことだという。この話を聞いて、もっと第三者が建物の「すばらしさ」を持ち主に声を出して主張することが町並みを保つ大きな力になりうることを知った。
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